資産・負債・収益・費用の認識と測定:いつ、いくら計上するか
認識時点と測定属性を分けて判断する基本を学びます。取得原価、時価、現在価値、見積りを、定義、認識、測定、計算、検算の順に整理して確認します。
動画の視聴は会員向けですこの講で分かるようになること
認識時点と測定属性を分けて判断できる。
- 認識時点と測定属性を分けて説明できる。
- 取得原価・時価・現在価値・見積りの違いを整理できる。
- 計算前に前提条件を確認し、検算まで行える。
前提知識
- 日商簿記2級の基本論点。
ひとつ前の講:会計学の地図:会計目的・概念フレームワーク・利益の意味
要点
- 認識は「いつ計上するか」、測定は「いくらで計上するか」の判断である。
- 取得原価・時価・現在価値・見積額のどれを使うかは、与えられた事実に即して決める。
- 現金の受払いではなく、取引の成立や権利義務の発生に着目して認識する。
- 見積りを含む計算では、前提条件、計算式、結果の妥当性を順に確認する。
判断のルール
- 定義を確認してから、認識の可否、測定属性、計算、検算の順に判断する。
- 問題文の時点情報を拾い、契約日・受渡日・提供完了日・支払期日を区別する。
- 将来金額が示されたときは、そのまま計上するのか現在価値に直すのかを先に判断する。
- 見積額を使うときは、確定額と見積額を混同せず、差額の意味を確認する。
例題
例題1前受けした代金の認識時点
当社は3月28日に、4月に行う保守サービス1か月分の代金60,000円を現金で受け取った。3月末時点ではサービス提供はまだ始まっていない。3月28日と4月30日に必要な処理を示しなさい。
答え(3月28日の受取時)借方:現金 60,000/貸方:前受金 60,000 (4月30日の提供完了時)借方:前受金 60,000/貸方:受取手数料 60,000
考え方見るべき事実は、現金受領の有無ではなく、サービス提供が完了しているかどうかです。3月28日時点では現金は受け取っているものの、4月分の役務提供はまだ行っていないため、収益はまだ認識できません。この時点では将来サービスを提供する義務が残っているので、負債として前受金を計上します。4月30日に1か月分のサービス提供が完了した時点で、はじめて収益を認識します。測定額は契約に基づく60,000円です。
確かめ各仕訳で借方合計と貸方合計はいずれも60,000円で一致する。3月末に収益が計上されていないため、未提供の役務に対応して負債が残る点も整合する。4月30日後は前受金が消え、同額の収益が計上される。
例題2取得原価に含める金額の判定
当社は機械を購入した。請求書の内訳は、本体価格500,000円、運送費18,000円、据付費12,000円であり、購入時に紹介先へ支払った研修費10,000円は、従業員への操作説明のための費用である。代金はすべて普通預金から支払った。機械の取得時の処理を示しなさい。
答え(機械取得時)借方:機械 530,000、支払手数料 10,000/貸方:普通預金 540,000
考え方判断のポイントは、どの支出が機械を使用可能な状態にするための取得原価に当たるかです。本体価格500,000円、運送費18,000円、据付費12,000円は、機械を取得し使用可能にするために通常必要な支出なので取得原価に含めます。一方、研修費10,000円は従業員の教育に関する費用であり、機械そのものの取得原価には含めません。したがって、機械の測定額は530,000円となり、研修費は当期の費用として処理します。
確かめ機械の取得原価は500,000+18,000+12,000=530,000円。総支払額は530,000+10,000=540,000円で、仕訳の借方合計540,000円と貸方合計540,000円が一致する。取得原価に含めるものと期間費用を分けている点も妥当である。
例題3将来支払額の現在価値による測定
当社は、2年後に110,250円を支払う義務について、現在価値で負債計上することにした。年5%で割り引くものとする。初度認識額を求めなさい。
答え現在価値=110,250円÷(1.05×1.05)=110,250円÷1.1025=100,000円 したがって、初度認識額は100,000円である。
考え方見るべき事実は、支払額が将来の金額として示されており、しかも現在価値で測定する前提が与えられていることです。この場合、将来の支払総額110,250円をそのまま負債計上するのではなく、時間価値を反映して現在の金額に割り引きます。2年後の金額なので、5%で2期間分割り引きます。計算は将来価値を割引係数1.1025で除する形になり、100,000円となります。認識と測定を分けると、負債として認識することと、その金額を現在価値で測ることが整理しやすくなります。
確かめ100,000円×1.05×1.05=110,250円となるため逆算で一致する。現在価値100,000円は将来支払額110,250円より小さく、期間が2年あることとも整合する。
よくある間違い
認識と測定を分けずに、結論だけを覚えて判断してしまう。
現金を受け取った時点で直ちに収益と考え、未提供分を負債として見ない。
将来金額が示されても、現在価値で測るかどうかの判断を飛ばしてしまう。
見積りの前提条件を確認せず、確定額と見積額を混同する。
この講の用語
- 認識にんしき
- 資産・負債・収益・費用として会計上取り上げるか、またそれをいつ計上するかを決めること。
- 測定そくてい
- 認識した項目について、どの金額で計上するかを定めること。
- 取得原価しゅとくげんか
- 資産の取得のために通常要した対価や付随費用を基礎とする金額。
- 現在価値げんざいかち
- 将来受け取るまたは支払う金額を、一定の割引率で現在時点の金額に換算したもの。
- 見積りみつもり
- 不確実な将来事象を含む場合に、合理的な前提と利用可能な情報に基づいて金額を定めること。
章立て
- 0:00導入この講の到達目標と、問題文を読む出発点を確認します。
- 0:17中心概念認識、測定、取得原価、時価、現在価値、見積り
- 1:00重要用語認識、測定、取得原価、現在価値、見積り
- 1:48基本ルール定義を確認してから、認識の可否、測定属性、計算、検算の順に判断する。 問題文の時点情報を拾い、契約日・受渡日・提供完了日・支払期日を区別する。 将来金額が示されたときは、そのまま計上するのか現在価値に直すのかを先に判断する。 見積額を使うときは、確定額と見積額を混同せず、差額の意味を確認する。
- 2:09判断手順取引事実または計算条件を確認し、使う勘定科目・計算順序・検算の順に進みます。
- 2:48確認ケース1当社は3月28日に、4月に行う保守サービス1か月分の代金60,000円を現金で受け取った。3月末時点ではサービス提供はまだ始まっていない。3月28日と4月30日に必要な処理を示しなさい。
- 3:11確認ケース2当社は機械を購入した。請求書の内訳は、本体価格500,000円、運送費18,000円、据付費12,000円であり、購入時に紹介先へ支払った研修費10,000円は、従業員への操作説明のための費用である。代金はすべて普通預金から支払った。機械の取得時の処理を示しなさい。
- 4:12確認ケース3当社は、2年後に110,250円を支払う義務について、現在価値で負債計上することにした。年5%で割り引くものとする。初度認識額を求めなさい。
- 5:29よくある誤り認識と測定を分けずに、結論だけを覚えて判断してしまう。 現金を受け取った時点で直ちに収益と考え、未提供分を負債として見ない。 将来金額が示されても、現在価値で測るかどうかの判断を飛ばしてしまう。 見積りの前提条件を確認せず、確定額と見積額を混同する。
- 7:06まとめこの論点の中心は、認識時点と測定属性を切り分けることです。いつ計上するかを事実から判断し、その後に取得原価・時価・現在価値・見積額のどれで測るかを決めます。定義、認識、測定、計算、検算の順に整理すれば、条件が変わっても安定して対応できます。
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