材料費・労務費・経費:実際原価を正しく集める
原価三要素である材料費・労務費・経費について、直接・間接と実際・予定の両面から整理し、棚卸を含めて実際原価を正しく集める考え方を学びます。
動画の視聴は会員向けですこの講で分かるようになること
原価三要素を直接・間接と実際・予定の両面から処理できる。
- 材料費の消費額を棚卸を含めて求められるようにする
- 労務費で実際賃率と予定賃率の使い分けができるようにする
- 経費を発生事実に基づいて直接・間接に分類できるようにする
前提知識
- 日商簿記2級の基本論点。
ひとつ前の講:工業簿記の全体構造:材料から製品原価までの帳簿の流れ
要点
- 原価三要素は材料費・労務費・経費に分けて把握する
- 各費目は特定製品との対応関係で直接費と間接費に区分する
- 実際額で処理するのか予定価格・予定賃率で処理するのかを確認する
- 材料費は棚卸を通して当期消費額を求める
- 計算後は内訳合計と総額の一致を必ず検算する
判断のルール
- 定義を確認して、材料・労務・経費のどれに当たるかを先に判定する
- 次に直接費か間接費かを、特定製品への追跡可能性で判断する
- 実際処理か予定処理かを確認してから金額を計算する
- 材料費は期首棚卸高と期末棚卸高を含めて消費額を測定する
- 最後に区分別合計と総額の一致を検算する
例題
例題1材料費の消費額と直接・間接の区分
当月の材料について、期首棚卸高20,000円、当月仕入高90,000円、期末棚卸高15,000円であった。払出記録を確認したところ、当月消費額のうち70,000円は製品Aに直接使われ、残額は工場共通の補助材料であった。材料費の当月消費額と、直接材料費・間接材料費の金額を求めなさい。
答え当月消費額=20,000円+90,000円-15,000円=95,000円 直接材料費=70,000円 間接材料費=95,000円-70,000円=25,000円
考え方まず見るべき事実は、購入額ではなく棚卸を含めた在庫の増減です。期首に持っていた材料と当月仕入れた材料の合計から、期末に残った未消費分を差し引くことで、当月に実際に消費した材料費を求めます。次に、払出記録から製品Aに直接対応する70,000円は直接材料費と判断します。残りは特定製品に直接対応しない補助材料なので、間接材料費と判断します。分類の根拠は費目名ではなく、特定製品への対応関係です。
確かめ検算:直接材料費70,000円+間接材料費25,000円=95,000円で、当月消費額と一致する。
例題2労務費を予定賃率で処理する確認
当月の作業時間は、製品Xへの直接作業80時間、工場全体の補助作業20時間であった。予定賃率は1時間あたり1,500円とする。予定賃率を用いて、直接労務費と間接労務費を求めなさい。
答え直接労務費=80時間×1,500円=120,000円 間接労務費=20時間×1,500円=30,000円 合計労務費=150,000円
考え方最初に確認する事実は、どの時間が特定製品に直接結びつくかです。製品Xへの80時間は直接労務費、工場全体の補助作業20時間は間接労務費になります。次に、この問題では予定賃率を使うと示されているため、実際賃率ではなく1時間1,500円を各時間に掛けます。判断の順序は、直接か間接かの区分を先に行い、その後で予定賃率を適用することです。時間区分を誤ると、金額計算が合っていても分類が誤りになります。
確かめ検算:120,000円+30,000円=150,000円。また、総作業時間100時間×1,500円=150,000円とも一致する。
例題3原価三要素を仕訳で集める基本
次の取引を記録しなさい。1. 材料を120,000円仕入れ、代金は掛けとした。2. 材料消費額は100,000円で、そのうち80,000円は直接材料、20,000円は間接材料であった。3. 賃金を現金で150,000円支払い、このうち100,000円は直接工、50,000円は工場監督者に関するものであった。4. 工場の電力料30,000円を現金で支払った。なお、すべて当月の実際額で処理する。
答え(材料仕入)借方:材料 120,000円/貸方:買掛金 120,000円 (材料消費の振替)借方:仕掛品 80,000円、製造間接費 20,000円/貸方:材料 100,000円 (賃金支払)借方:仕掛品 100,000円、製造間接費 50,000円/貸方:現金 150,000円 (工場電力料支払)借方:製造間接費 30,000円/貸方:現金 30,000円
考え方まず材料の購入は、まだ消費していないので材料勘定で受けます。次に消費時点で、製品に直接対応する80,000円は仕掛品へ、工場共通の20,000円は製造間接費へ振り替えます。賃金も同様に、直接工に関する100,000円は仕掛品、工場監督者に関する50,000円は製造間接費です。電力料は材料費でも労務費でもないため経費であり、しかも工場全体に関するため間接経費として製造間接費に集めます。原価三要素を直接・間接で分け、直接分は仕掛品、間接分は製造間接費に集める流れが判断の中心です。
確かめ各仕訳の借方合計と貸方合計はそれぞれ一致している。さらに、当月に製造原価として集めた額は、仕掛品80,000円+100,000円=180,000円、製造間接費20,000円+50,000円+30,000円=100,000円で、合計280,000円となる。
よくある間違い
材料の購入額をそのまま当期消費額としてしまい、期末棚卸高を差し引かない
直接費と間接費の区別を費目名だけで決め、発生事実を見ない
予定賃率を使う場面で実際賃率を掛けてしまう、またはその逆をしてしまう
直接材料費・間接材料費などの内訳合計と総額の一致を確かめない
この講の用語
- 材料ざいりょう
- 製品の製造に用いられる物品で、払出しと棚卸を通じて当期の消費額を把握する対象。
- 労務ろうむ
- 製造のために投入された労働に関する原価で、作業時間や賃率に基づいて把握する対象。
- 経費けいひ
- 材料費・労務費以外の製造関連原価で、発生事実に応じて直接経費または間接経費に分ける。
- 予定価格・予定賃率よていかかく よていちんりつ
- 実際額の代わりに、あらかじめ定めた単価や賃率を用いて原価を計算するための基準。
- 棚卸たなおろし
- 期末などに実際の在庫を確認し、未消費分を当期原価から除くための手続。
章立て
- 0:00導入この講の到達目標と、問題文を読む出発点を確認します。
- 0:25中心概念材料、労務、経費、予定価格・予定賃率、棚卸
- 1:08重要用語材料、労務、経費、予定価格・予定賃率、棚卸
- 2:00基本ルール定義を確認して、材料・労務・経費のどれに当たるかを先に判定する 次に直接費か間接費かを、特定製品への追跡可能性で判断する 実際処理か予定処理かを確認してから金額を計算する 材料費は期首棚卸高と期末棚卸高を含めて消費額を測定する 最後に区分別合計と総額の一致を検算する
- 2:25判断手順取引事実または計算条件を確認し、使う勘定科目・計算順序・検算の順に進みます。
- 3:15確認ケース1当月の材料について、期首棚卸高20,000円、当月仕入高90,000円、期末棚卸高15,000円であった。払出記録を確認したところ、当月消費額のうち70,000円は製品Aに直接使われ、残額は工場共通の補助材料であった。材料費の当月消費額と、直接材料費・間接材料費の金額を求めなさい。
- 3:59確認ケース2当月の作業時間は、製品Xへの直接作業80時間、工場全体の補助作業20時間であった。予定賃率は1時間あたり1,500円とする。予定賃率を用いて、直接労務費と間接労務費を求めなさい。
- 5:35確認ケース3次の取引を記録しなさい。1. 材料を120,000円仕入れ、代金は掛けとした。2. 材料消費額は100,000円で、そのうち80,000円は直接材料、20,000円は間接材料であった。3. 賃金を現金で150,000円支払い、このうち100,000円は直接工、50,000円は工場監督者に関するものであった。4. 工場の電力料30,000円を現金で支払った。なお、すべて当月の実際額で処理する。
- 6:52よくある誤り材料の購入額をそのまま当期消費額としてしまい、期末棚卸高を差し引かない 直接費と間接費の区別を費目名だけで決め、発生事実を見ない 予定賃率を使う場面で実際賃率を掛けてしまう、またはその逆をしてしまう 直接材料費・間接材料費などの内訳合計と総額の一致を確かめない
- 8:49まとめ費目別計算では、材料費・労務費・経費を区別し、さらに直接・間接、実際・予定の観点で正しく処理することが基本です。特に材料費では棚卸を含めて消費額を求め、労務費では対象時間と賃率の種類を確認し、経費では発生事実から分類します。判断は定義、認識・測定、計算順序、検算の順に進めると安定します。
登録は1分・クレジットカード不要。無料のまま練習・暗記カード・模試まで使えます。
