株式会社会計会員向け9:05

株主資本・社債・組織再編:会社の資本が動くとき

資本金、自己株式、社債、新株予約権、合併、株式交換・移転、清算について、資本取引と損益取引を混同せずに整理し、純資産の変動を正しく記帳する考え方を学びます。

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この講で分かるようになること

資本取引と損益取引を混同せず、純資産の変動を記帳できる。

  • 株主との取引か、債権者との取引かを区別できるようになる。
  • 自己株式や新株予約権を損益取引と混同せずに処理できるようになる。
  • 社債の負債性と利息の費用性を整理できるようになる。

前提知識

  • 日商簿記2級の基本論点。

要点

  1. 資本金や自己株式は純資産に関する取引として捉える。
  2. 社債は負債として認識し、利息は期間配分により費用処理する。
  3. 新株予約権は株式そのものではなく、独立した項目として理解する。
  4. 合併や株式交換・移転は、誰が何を受け取り何を交付したかを先に整理する。

判断のルール

  • 定義を先に確認し、その取引が資本取引か損益取引かを判定する。
  • 認識・測定では、純資産項目か負債項目かを明確に区別する。
  • 計算は事実整理、金額算定、仕訳作成の順で進める。
  • 最後に貸借一致と純資産の増減の整合性を検算する。

例題

例題1株式発行時の資本金と資本剰余金

ある会社が普通株式100株を1株あたり5,000円で発行し、払込金は全額当座預金に入金された。払込総額のうち250,000円を資本金とし、残額を資本剰余金とする。このときの仕訳を示しなさい。

答え(株式発行)借方:当座預金 500,000/貸方:資本金 250,000、資本剰余金 250,000

考え方まず事実として、発行株式数100株、払込価額5,000円なので払込総額は500,000円です。次に、この総額のうち250,000円を資本金にすると指定されているため、残り250,000円は資本剰余金になります。株主からの払込みは会社の持分に関する資本取引なので、収益にはしません。入金先は当座預金であるため、借方は当座預金500,000と判断します。

確かめ借方合計500,000、貸方合計250,000+250,000=500,000で一致する。払込総額がすべて純資産項目に振り分けられている点も整合する。

例題2自己株式の取得と処分

ある会社は自己株式20株を1株あたり4,000円で現金により取得した。その後、そのうち10株を1株あたり4,500円で現金により処分した。自己株式処分差額は資本剰余金で処理するものとする。必要な仕訳を示しなさい。

答え(自己株式の取得)借方:自己株式 80,000/貸方:現金 80,000 (自己株式の処分)借方:現金 45,000/貸方:自己株式 40,000、資本剰余金 5,000

考え方最初に取得時は、20株×4,000円で80,000円です。自己株式は資産ではなく純資産の控除項目ですが、仕訳上は自己株式勘定を借方に計上します。次に処分時は、処分した10株の帳簿上の取得原価が1株4,000円なので40,000円です。実際の受取額は10株×4,500円で45,000円となるため、差額5,000円が生じます。この差額は通常の売買益ではなく、資本取引として資本剰余金で処理します。

確かめ取得時は借方80,000、貸方80,000で一致。処分時は借方45,000、貸方40,000+5,000=45,000で一致する。取得した20株のうち10株を処分したので、残る自己株式の帳簿価額は40,000となり数量とも整合する。

例題3社債の発行価額と利息の確認

ある会社は額面総額1,000,000円の社債を発行し、発行価額は額面100円につき98円、払込金は当座預金に入金された。また、年利3%の利息を年末に現金で支払う。このとき、発行時と1年分の利息支払時の仕訳を示しなさい。

答え(社債発行)借方:当座預金 980,000、社債発行差金 20,000/貸方:社債 1,000,000 (利息支払)借方:社債利息 30,000/貸方:現金 30,000

考え方まず発行価額は額面1,000,000円×98%で980,000円です。将来の返済義務は額面総額1,000,000円なので、貸方は社債1,000,000円となります。受け取った金額との差額20,000円は社債発行差金として処理します。次に利息は、社債が負債であることとは別に、時間の経過に応じて発生する費用です。年利3%なので1,000,000円×3%=30,000円を社債利息として計上し、支払額と一致します。

確かめ発行時は借方980,000+20,000=1,000,000、貸方1,000,000で一致する。利息支払時は借方30,000、貸方30,000で一致する。利息計算も1,000,000×3%=30,000で確認できる。

よくある間違い

自己株式の取得を資産の取得と考えてしまう。

自己株式の処分差額を収益や費用で処理してしまう。

社債の発行と株式の発行を同じ感覚で考えてしまう。

新株予約権と新株発行を区別せずに処理してしまう。

結論だけを覚え、前提条件や計算過程の確認を省いてしまう。

この講の用語

資本金しほんきん
株主からの払込みのうち、会社法等の取扱いに従って資本金として計上される純資産の項目。
自己株式じこかぶしき
会社が取得した自社の株式であり、純資産の控除項目として扱う。
社債しゃさい
会社が資金調達のために発行する債務証券で、発行時には負債として認識する。
新株予約権しんかぶよやくけん
将来、一定条件で株式の交付を受けることができる権利に関する項目。
合併がっぺい
会社が統合し、資産・負債や持分関係を引き継ぐ組織再編の一つ。

章立て

  1. 0:00導入この講の到達目標と、問題文を読む出発点を確認します。
  2. 0:30中心概念資本金、自己株式、社債、新株予約権、合併、株式交換・移転、清算
  3. 1:23重要用語資本金、自己株式、社債、新株予約権、合併
  4. 2:22基本ルール定義を先に確認し、その取引が資本取引か損益取引かを判定する。 認識・測定では、純資産項目か負債項目かを明確に区別する。 計算は事実整理、金額算定、仕訳作成の順で進める。 最後に貸借一致と純資産の増減の整合性を検算する。
  5. 2:55判断手順取引事実または計算条件を確認し、使う勘定科目・計算順序・検算の順に進みます。
  6. 3:36確認ケース1ある会社が普通株式100株を1株あたり5,000円で発行し、払込金は全額当座預金に入金された。払込総額のうち250,000円を資本金とし、残額を資本剰余金とする。このときの仕訳を示しなさい。
  7. 4:02確認ケース2ある会社は自己株式20株を1株あたり4,000円で現金により取得した。その後、そのうち10株を1株あたり4,500円で現金により処分した。自己株式処分差額は資本剰余金で処理するものとする。必要な仕訳を示しなさい。
  8. 5:23確認ケース3ある会社は額面総額1,000,000円の社債を発行し、発行価額は額面100円につき98円、払込金は当座預金に入金された。また、年利3%の利息を年末に現金で支払う。このとき、発行時と1年分の利息支払時の仕訳を示しなさい。
  9. 6:42よくある誤り自己株式の取得を資産の取得と考えてしまう。 自己株式の処分差額を収益や費用で処理してしまう。 社債の発行と株式の発行を同じ感覚で考えてしまう。 新株予約権と新株発行を区別せずに処理してしまう。 結論だけを覚え、前提条件や計算過程の確認を省いてしまう。
  10. 8:10まとめ株式会社会計では、資本取引と損益取引を分けて考えることが中心です。資本金、自己株式、新株予約権は純資産の動きとして、社債は負債の動きとして整理します。組織再編や清算でも、まず事実関係を整理し、定義、認識・測定、計算順序、検算の順に確認すれば、処理の筋道が見えやすくなります。
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