本支店会計と個別財務諸表:内部利益を残さずに締める
本店と支店の個別帳簿をもとに、内部利益を残さず決算整理を行い、報告用の個別財務諸表へ仕上げる順番を確認します。
動画の視聴は会員向けですこの講で分かるようになること
個別帳簿から報告用財務諸表へ仕上げる順番を説明できる。
- 本支店取引が内部取引であることを区別して説明できる。
- 期末商品に含まれる内部利益の控除額を判断できる。
- 決算整理後の数値を財務諸表表示へつなげて確認できる。
前提知識
- 日商簿記2級の基本論点。
ひとつ前の講:株主資本・社債・組織再編:会社の資本が動くとき
要点
- 本支店取引は同一企業内の内部取引として性質を見分ける。
- 決算では期末在庫に含まれる内部利益を残さないよう整理する。
- 定義、認識・測定、計算順序、検算の順で判断する。
- 整理後残高から個別財務諸表の表示科目へ落とし込む。
判断のルール
- まず取引が外部取引か内部取引かを判定する。
- 内部利益は、期末に外部へ未実現の部分だけを控除する。
- 与えられた利益率が原価基準か売価基準かを読み違えない。
- 計算後は本店勘定と支店勘定、損益と資産の対応関係を検算する。
例題
例題1期末商品に含まれる内部利益の控除額を求めるケース
本店は支店へ、原価に20%を加えた内部振替価額で商品を送っている。期末に支店の商品棚卸高は72,000円で、そのうち本店から受け取った商品の分が60,000円含まれていた。期末商品に含まれる内部利益の控除額を求めなさい。
答え内部利益控除額は10,000円。計算式:60,000円×20/120=10,000円。
考え方見るべき事実は二つです。第一に、内部利益が含まれているのは支店の期末商品全体72,000円ではなく、そのうち本店から受け取った商品60,000円の部分だけです。第二に、20%は原価に加えた率なので、内部振替価額に含まれる利益部分を逆算するには20/120を用います。したがって、未実現の内部利益は60,000円×20/120で求めます。外部から仕入れた部分があるなら、その部分には内部利益は含まれないと判断します。
確かめ原価に20%加算なら、内部振替価額120に対して利益は20です。比率20/120は妥当です。60,000円-10,000円=50,000円となり、内部利益控除後の商品額が原価ベースに戻るので整合します。
例題2本店から支店への商品発送の仕訳確認ケース
本店が支店へ商品30,000円を発送し、同時に発送費1,200円を現金で支払った。発送費は本店負担とする。標準的な勘定科目で、本店側の仕訳を示しなさい。
答え(商品を支店へ発送)借方:支店 30,000円/貸方:仕入 30,000円 (発送費を本店が現金で支払)借方:発送費 1,200円/貸方:現金 1,200円
考え方最初に、この商品移動は企業外部への売上ではなく、本店と支店の内部取引だと判断します。そのため売上を使うのではなく、支店に対する内部勘定で処理します。商品を本店の商品勘定から振り替えるので、貸方は仕入を用いて減少を表します。次に発送費は本店負担と明示されているため、支店へ付け替えず本店の費用として処理します。問題文に費用負担者が書かれているかを読むことが判断のポイントです。
確かめ1行目は借方30,000円、貸方30,000円で一致しています。2行目は借方1,200円、貸方1,200円で一致しています。内部取引なので売上勘定を使っていない点も妥当です。
例題3内部利益控除後の期末商品額を確認するケース
支店の期末商品は95,000円である。このうち本店からの内部振替商品が80,000円含まれ、内部振替価額は原価に25%を加えた金額である。決算で内部利益を控除した後の期末商品額を求めなさい。
答え内部利益控除額は16,000円。計算式:80,000円×25/125=16,000円。したがって、控除後の期末商品額は95,000円-16,000円=79,000円。
考え方まず、内部利益が含まれるのは本店からの内部振替商品80,000円だけです。次に、25%は原価基準の加算率なので、内部振替価額に含まれる利益割合は25/125になります。ここを25/100としてしまうと過大に控除してしまいます。したがって内部利益は80,000円×25/125で16,000円です。企業全体として外部に未実現の利益を除くため、支店の期末商品95,000円からこの16,000円を差し引いて、決算上の適正な商品額を求めます。
確かめ80,000円のうち利益16,000円を除くと原価部分は64,000円です。原価64,000円に25%を加えると16,000円で、合計80,000円に戻ります。さらに95,000円-16,000円=79,000円となり、控除後金額も計算上整合しています。
よくある間違い
内部取引と外部取引の区別を曖昧にしたまま計算を始める。
期末商品全体に内部利益率をかけてしまい、内部仕入分だけを見ていない。
利益率の基準が原価か売価かを確認せずに控除額を求める。
整理後の数値が財務諸表のどの科目に入るかを追わず、計算だけで終える。
この講の用語
- 本支店取引ほんしてんとりひき
- 本店と支店の間で行われる商品・資金・費用負担などの内部取引をいう。企業外部との取引ではないため、決算では対応関係を整えて把握する。
- 在外支店ざいがいしてん
- 海外に所在する支店をいう。本講では詳細論点には立ち入らず、個別帳簿から報告用数値へまとめる視点を押さえる。
- 決算手続けっさんてつづき
- 期末時点で帳簿を整理し、未処理事項や内部利益などを調整して、財務諸表作成に必要な整理後数値を確定する手続をいう。
- 財務諸表ざいむしょひょう
- 決算整理後の数値をもとに企業の財政状態や経営成績を示す報告書で、損益計算書や貸借対照表などを含む。
- 注記ちゅうき
- 財務諸表の数値だけでは伝わりにくい会計処理や重要な内容を補足説明する記載をいう。
章立て
- 0:00導入この講の到達目標と、問題文を読む出発点を確認します。
- 0:21中心概念本支店取引、在外支店、決算手続、財務諸表、CF、注記
- 0:58重要用語本支店取引、在外支店、決算手続、財務諸表、注記
- 1:38基本ルールまず取引が外部取引か内部取引かを判定する。 内部利益は、期末に外部へ未実現の部分だけを控除する。 与えられた利益率が原価基準か売価基準かを読み違えない。 計算後は本店勘定と支店勘定、損益と資産の対応関係を検算する。
- 2:04判断手順取引事実または計算条件を確認し、使う勘定科目・計算順序・検算の順に進みます。
- 2:46確認ケース1本店は支店へ、原価に20%を加えた内部振替価額で商品を送っている。期末に支店の商品棚卸高は72,000円で、そのうち本店から受け取った商品の分が60,000円含まれていた。期末商品に含まれる内部利益の控除額を求めなさい。
- 3:09確認ケース2本店が支店へ商品30,000円を発送し、同時に発送費1,200円を現金で支払った。発送費は本店負担とする。標準的な勘定科目で、本店側の仕訳を示しなさい。
- 4:38確認ケース3支店の期末商品は95,000円である。このうち本店からの内部振替商品が80,000円含まれ、内部振替価額は原価に25%を加えた金額である。決算で内部利益を控除した後の期末商品額を求めなさい。
- 5:52よくある誤り内部取引と外部取引の区別を曖昧にしたまま計算を始める。 期末商品全体に内部利益率をかけてしまい、内部仕入分だけを見ていない。 利益率の基準が原価か売価かを確認せずに控除額を求める。 整理後の数値が財務諸表のどの科目に入るかを追わず、計算だけで終える。
- 7:41まとめ本支店・個別決算では、内部取引の把握、決算整理、内部利益の控除、財務諸表への表示、検算という流れを順番どおりに進めることが重要です。結論を覚えるより、何が内部で何が外部か、どの金額にどの率をかけるか、整理後にどこへ表示されるかを一つずつ確認しましょう。
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