個別原価と総合原価:製造形態に合わせて原価を追う
製造指図書を起点に考える個別原価計算と、数量・進捗度を起点に考える総合原価計算の違いを整理し、工程別・組別・等級別まで一連の流れで判断できるようにします。
動画の視聴は会員向けですこの講で分かるようになること
製造指図書か数量・進捗度かを起点に計算方法を選べる。
- 製造指図書か数量・進捗度かを見て計算方法を選べる。
- 工程別・組別・等級別を集計単位の違いとして整理できる。
- 数量と原価の検算関係を自分で確認できる。
前提知識
- 日商簿記2級の基本論点。
ひとつ前の講:製造間接費と部門別計算:配賦差異の意味までつかむ
要点
- 個別原価計算は製造指図書ごとに原価を集計する。
- 総合原価計算は一定期間の原価を数量と進捗度で配分する。
- 工程別は工程ごと、組別は組ごと、等級別は等級ごとに原価把握の視点を持つ。
- 方法選択の後に、数量整理、原価集計、配分、検算の順で進める。
判断のルール
- 定義を確認し、製造形態に合う計算方法を選ぶ。
- 認識・測定では、個別原価は指図書別、総合原価は数量と進捗度を整理する。
- 計算順序は資料整理、単位当たり原価または指図書別原価の計算、完成品と仕掛品への配分とする。
- 検算では数量の一致と原価配分額の一致を必ず確認する。
例題
例題1個別原価計算か総合原価計算かの判定
工場Aでは、顧客ごとに仕様の異なる機械を注文生産しており、指図書101番と102番に分けて材料費や労務費を記録している。工場Bでは、同一規格の洗剤を連続生産しており、当月投入2,000個、完成1,600個、月末仕掛品400個を把握している。どちらにどの計算方法を用いるべきか、簡潔に答えなさい。
答え工場A:個別原価計算を用いる。 工場B:総合原価計算を用いる。
考え方判断の起点は、原価を何に集めるかです。工場Aは顧客ごとに仕様が異なり、指図書101番・102番のように注文単位で原価を記録しています。したがって、製造指図書ごとに原価を追跡する個別原価計算が適切です。工場Bは同一規格品を連続生産し、当月投入数量、完成数量、月末仕掛品数量という数量資料が中心です。この形では一定期間の原価を数量ベースで配分する総合原価計算を選びます。名称ではなく、資料の持ち方から判断することが大切です。
確かめ工場Aは指図書という個別追跡資料があるため個別原価、工場Bは投入2,000個=完成1,600個+月末400個で数量管理になっているため総合原価、という対応が一貫している。
例題2総合原価計算で単位当たり原価を求める基本ケース
同一製品を連続生産する部門で、当月発生製造原価は240,000円、当月完成品は800個、月末仕掛品は200個で加工進捗度は50%である。材料は工程の始点で全量投入されるため、月末仕掛品の材料進捗度は100%とする。月初仕掛品はない。材料費120,000円、加工費120,000円として、完成品原価と月末仕掛品原価を求めなさい。
答え材料の完成品換算量:完成品800個+月末仕掛品200個×100%=1,000個 加工の完成品換算量:完成品800個+月末仕掛品200個×50%=900個 材料単価:120,000円÷1,000個=120円 加工単価:120,000円÷900個=133.333…円 完成品原価:800個×(120円+133.333…円)=202,666.666…円 月末仕掛品原価:材料 200個×120円=24,000円、加工 200個×50%×133.333…円=13,333.333…円、合計37,333.333…円 円未満をそのまま扱うと、完成品原価202,666.666…円、月末仕掛品原価37,333.333…円
考え方まず総合原価計算なので、数量と進捗度から完成品換算量を求めます。材料は始点で全量投入されるため、月末仕掛品も材料は100%と判断します。一方、加工費は進捗度50%なので、月末仕掛品200個は完成品換算量100個分です。次に、材料費と加工費を分けて単位当たり原価を計算し、その合計で完成品原価を求めます。最後に月末仕掛品には、材料は全額、加工は50%分だけ配分します。材料と加工を同じ進捗度で処理しないことが判断上の要点です。
確かめ原価の検算:完成品原価202,666.666…円+月末仕掛品原価37,333.333…円=240,000円で当月発生製造原価と一致する。数量の基礎も、800個完成・200個月末仕掛品で合計1,000個分の投入管理と整合する。
例題3等級別の配分を行う短い確認ケース
同一工程からA等級品とB等級品が生じた。当月完成数量はA等級300個、B等級200個、当月総合原価は280,000円である。等価係数はA等級1.2、B等級0.8とする。等級別の製品原価を求めなさい。
答え等価積数:A等級 300個×1.2=360、B等級 200個×0.8=160、合計520 積数1当たり原価:280,000円÷520=538.461538…円 A等級原価:360×538.461538…円=193,846.153…円 B等級原価:160×538.461538…円=86,153.846…円
考え方等級別では、単純な数量比ではなく、等価係数を用いて各等級を共通の尺度に直します。そこで最初にA等級とB等級の数量へそれぞれ等価係数を掛け、等価積数を求めます。次に、総合原価を等価積数の合計で割って積数1当たり原価を計算します。そのうえで、各等級の等価積数にその単価を掛ければ、等級別の原価が求まります。ここでは品質差や規格差を数量だけで配分せず、係数で補正することが判断の中心です。
確かめ原価の検算:A等級原価193,846.153…円+B等級原価86,153.846…円=280,000円となり、当月総合原価と一致する。等価積数も360+160=520で計算過程が整合している。
よくある間違い
製造指図書があるのに総合原価計算として処理してしまう。
総合原価計算で完成数量と月末仕掛品数量の関係を整理せずに計算を始める。
進捗度を考える場面で、材料と加工を同じ割合で処理してしまう。
工程別・組別・等級別を別々の独立論点と考え、集計単位の違いとして整理できない。
この講の用語
- 個別原価こべつげんか
- 製造指図書や注文ごとに原価を集計し、案件別の製品原価を求める計算方法。
- 総合原価そうごうげんか
- 同種製品を連続生産する場合に、一定期間の製造原価を完成品と仕掛品へ配分して求める計算方法。
- 工程別こうていべつ
- 製品が複数工程を通過する場合に、工程ごとに原価を集計して把握する考え方。
- 組別くみべつ
- 同じ製造過程でも、組ごとに原価を区分して管理する考え方。
- 等級別とうきゅうべつ
- 同一工程から生じる異なる等級の製品に対し、一定の基準で原価を配分する考え方。
章立て
- 0:00導入この講の到達目標と、問題文を読む出発点を確認します。
- 0:18中心概念個別原価、総合原価、工程別、組別、等級別
- 1:02重要用語個別原価、総合原価、工程別、組別、等級別
- 1:48基本ルール定義を確認し、製造形態に合う計算方法を選ぶ。 認識・測定では、個別原価は指図書別、総合原価は数量と進捗度を整理する。 計算順序は資料整理、単位当たり原価または指図書別原価の計算、完成品と仕掛品への配分とする。 検算では数量の一致と原価配分額の一致を必ず確認する。
- 2:10判断手順取引事実または計算条件を確認し、使う勘定科目・計算順序・検算の順に進みます。
- 2:47確認ケース1工場Aでは、顧客ごとに仕様の異なる機械を注文生産しており、指図書101番と102番に分けて材料費や労務費を記録している。工場Bでは、同一規格の洗剤を連続生産しており、当月投入2,000個、完成1,600個、月末仕掛品400個を把握している。どちらにどの計算方法を用いるべきか、簡潔に答えなさい。
- 3:10確認ケース2同一製品を連続生産する部門で、当月発生製造原価は240,000円、当月完成品は800個、月末仕掛品は200個で加工進捗度は50%である。材料は工程の始点で全量投入されるため、月末仕掛品の材料進捗度は100%とする。月初仕掛品はない。材料費120,000円、加工費120,000円として、完成品原価と月末仕掛品原価を求めなさい。
- 4:48確認ケース3同一工程からA等級品とB等級品が生じた。当月完成数量はA等級300個、B等級200個、当月総合原価は280,000円である。等価係数はA等級1.2、B等級0.8とする。等級別の製品原価を求めなさい。
- 6:41よくある誤り製造指図書があるのに総合原価計算として処理してしまう。 総合原価計算で完成数量と月末仕掛品数量の関係を整理せずに計算を始める。 進捗度を考える場面で、材料と加工を同じ割合で処理してしまう。 工程別・組別・等級別を別々の独立論点と考え、集計単位の違いとして整理できない。
- 8:50まとめ個別原価計算は製造指図書ごとに原価を追跡し、総合原価計算は数量と進捗度を使って一定期間の原価を完成品と仕掛品へ配分します。さらに工程別・組別・等級別は、原価をどの単位で集計するかの違いとして理解します。解答では、製造形態の見極め、資料整理、計算、検算の順を守ることが得点の安定につながります。
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