予算管理と差異分析:計画と実績の差を行動へ変える
予算、フレキシブル・バジェット、責任会計、業績測定の基本を整理し、差異を原因と責任に結び付けて理解します。
動画の視聴は会員向けですこの講で分かるようになること
差異を単なる有利・不利で終わらせず、原因と責任へ結び付ける。
- 差異を有利・不利の表示で終わらせず、原因分析まで進める。
- 実際操業度に基づくフレキシブル・バジェットを作れるようにする。
- 責任会計の視点から、差異と責任区分の関係を整理する。
前提知識
- 日商簿記2級の基本論点。
ひとつ前の講:原価行動とCVP:限界利益から利益計画を作る
要点
- 予算は計画と統制の基準として用いる。
- 実績比較では操業度の影響を除くためにフレキシブル・バジェットが重要である。
- 差異分析は原因把握と責任区分の明確化に結び付ける。
- 業績測定では金額だけでなく責任範囲と改善可能性も見る。
判断のルール
- 定義を先に確認し、何と何を比較する差異かを明確にする。
- 変動費と固定費を区別して、実際操業度で予算を組み替える。
- 当初予算、フレキシブル・バジェット、実績の順で比較する。
- 総差異と分解差異の合計が一致するか検算する。
例題
例題1変動費と固定費を含むフレキシブル・バジェット
ある製造部門の月間予算は、操業度1,000時間で変動費200,000円、固定費120,000円、合計320,000円であった。実際操業度は1,100時間、実績原価は変動費235,000円、固定費125,000円、合計360,000円であった。実際操業度に基づくフレキシブル・バジェットと、実績との差異を求めなさい。
答えフレキシブル・バジェットの変動費=200,000円×1,100時間÷1,000時間=220,000円 フレキシブル・バジェットの固定費=120,000円 フレキシブル・バジェット合計=340,000円 実績との差異:変動費 15,000円不利、固定費 5,000円不利、合計 20,000円不利
考え方まず当初予算をそのまま実績と比べると、操業度が1,000時間から1,100時間へ増えている影響が混ざります。そこで、変動費は操業度に比例すると判断して1.1倍に組み替え、固定費は総額一定として据え置きます。その結果、実際操業度での予算は340,000円です。次に実績360,000円と比較すると、増加分のうち操業度増加で説明できる部分を除いた管理上の差異は20,000円不利と分かります。さらに費目別に見ると、変動費15,000円不利、固定費5,000円不利です。
確かめ合計差異20,000円不利=変動費差異15,000円不利+固定費差異5,000円不利。フレキシブル・バジェット340,000円+20,000円=実績360,000円で一致する。
例題2責任区分を意識した差異の整理
ある月の材料に関して、標準では製品1個当たり材料2kg、1kg当たり300円を予定していた。実際には100個を生産し、材料210kgを1kg当たり290円で購入・消費した。材料消費量差異と材料価格差異を求め、どのような責任区分で見るべきか簡潔に述べなさい。
答え標準数量=100個×2kg=200kg 標準価格=1kg当たり300円 実際数量=210kg 実際価格=1kg当たり290円 材料消費量差異=(210kg-200kg)×300円=3,000円不利 材料価格差異=(290円-300円)×210kg=2,100円有利 差異の見方:消費量差異は製造部門の作業能率や歩留りに関係しやすく、価格差異は購買部門の仕入条件に関係しやすい。
考え方まず生産量100個から標準数量200kgを求めます。次に、実際に使った数量210kgとの比較で、余分に10kg使っているため、標準価格で評価した消費量差異は3,000円不利です。一方、実際価格は標準価格より1kg当たり10円安いので、実際数量210kgに対して2,100円有利の価格差異となります。責任会計では、使い過ぎは製造現場、仕入単価の変動は購買活動に関係しやすいと考えて整理します。ただし、実際には材料品質など複合要因もあり得るため、金額だけで決めつけないことが大切です。
確かめ総額で確認すると、標準原価は200kg×300円=60,000円、実際原価は210kg×290円=60,900円で900円不利。分解差異も3,000円不利+2,100円有利=900円不利となり一致する。
例題3売上高の見かけだけで判断しない業績測定
ある部門の月次予算は販売数量500個、販売単価1,000円、変動販売費は売上高の10%、固定費は120,000円であった。実績は販売数量550個、販売単価950円、変動販売費は売上高の10%、固定費は125,000円であった。予算利益、実績利益、実際数量に基づくフレキシブル・バジェット利益を求め、業績をどう読むべきか示しなさい。
答え予算売上高=500個×1,000円=500,000円 予算変動販売費=500,000円×10%=50,000円 予算利益=500,000円-50,000円-120,000円=330,000円 実績売上高=550個×950円=522,500円 実績変動販売費=522,500円×10%=52,250円 実績利益=522,500円-52,250円-125,000円=345,250円 実際数量に基づくフレキシブル・バジェット売上高=550個×1,000円=550,000円 実際数量に基づく変動販売費=550,000円×10%=55,000円 実際数量に基づくフレキシブル・バジェット利益=550,000円-55,000円-120,000円=375,000円 比較:実績利益は予算利益より15,250円有利、ただし実際数量基準の利益より29,750円不利
考え方最初に予算利益と実績利益を比べると、実績の方が上回っているため、一見すると好成績に見えます。しかし販売数量が500個から550個へ増えているので、その増加分を考慮した比較が必要です。そこで実際数量550個を基準に、単価は予算の1,000円、変動販売費率は10%、固定費は予算の120,000円としてフレキシブル・バジェット利益を計算します。すると本来期待された利益は375,000円であり、実績利益345,250円はこれを下回ります。値下げと固定費増加が、数量増加の効果を一部打ち消したと読めます。
確かめ予算利益330,000円から実際数量基準利益375,000円への増加45,000円は、数量増加50個による限界利益増加として説明できる。1個当たり限界利益は1,000円-100円=900円なので、50個×900円=45,000円。さらに375,000円-実績利益345,250円=29,750円不利で、値下げと固定費増加の影響を示す。
よくある間違い
当初予算と実績をそのまま比べ、操業度の違いを無視する。
変動費と固定費の区別をせずにフレキシブル・バジェットを作る。
差異の有利・不利だけを見て、原因や責任区分を考えない。
総差異と各差異の合計が一致するか確認しない。
この講の用語
- 予算よさん
- 将来の活動計画を数量や金額で示し、統制の基準として用いる見積り。
- フレキシブル・バジェットふれきしぶるばじぇっと
- 実際の操業度に合わせて予算額を組み替えた予算で、操業度差の影響を調整して比較するために用いる。
- 責任会計せきにんかいけい
- 部門や管理者ごとの責任範囲に応じて収益や費用を把握し、評価と改善に役立てる考え方。
- 業績測定ぎょうせきそくてい
- 予算や実績の情報を用いて、部門や管理者の成果を評価すること。
章立て
- 0:00導入この講の到達目標と、問題文を読む出発点を確認します。
- 0:22中心概念予算、フレキシブル・バジェット、責任会計、業績測定
- 1:09重要用語予算、フレキシブル・バジェット、責任会計、業績測定
- 1:47基本ルール定義を先に確認し、何と何を比較する差異かを明確にする。 変動費と固定費を区別して、実際操業度で予算を組み替える。 当初予算、フレキシブル・バジェット、実績の順で比較する。 総差異と分解差異の合計が一致するか検算する。
- 2:12判断手順取引事実または計算条件を確認し、使う勘定科目・計算順序・検算の順に進みます。
- 2:57確認ケース1ある製造部門の月間予算は、操業度1,000時間で変動費200,000円、固定費120,000円、合計320,000円であった。実際操業度は1,100時間、実績原価は変動費235,000円、固定費125,000円、合計360,000円であった。実際操業度に基づくフレキシブル・バジェットと、実績との差異を求めなさい。
- 3:35確認ケース2ある月の材料に関して、標準では製品1個当たり材料2kg、1kg当たり300円を予定していた。実際には100個を生産し、材料210kgを1kg当たり290円で購入・消費した。材料消費量差異と材料価格差異を求め、どのような責任区分で見るべきか簡潔に述べなさい。
- 4:33確認ケース3ある部門の月次予算は販売数量500個、販売単価1,000円、変動販売費は売上高の10%、固定費は120,000円であった。実績は販売数量550個、販売単価950円、変動販売費は売上高の10%、固定費は125,000円であった。予算利益、実績利益、実際数量に基づくフレキシブル・バジェット利益を求め、業績をどう読むべきか示しなさい。
- 6:07よくある誤り当初予算と実績をそのまま比べ、操業度の違いを無視する。 変動費と固定費の区別をせずにフレキシブル・バジェットを作る。 差異の有利・不利だけを見て、原因や責任区分を考えない。 総差異と各差異の合計が一致するか確認しない。
- 8:27まとめ予算管理では、予算を基準として実績との差を把握し、その差を原因と責任へ結び付けて改善に生かします。実績比較ではフレキシブル・バジェットを用いて操業度の影響を調整し、責任会計の視点で公平に評価することが重要です。
登録は1分・クレジットカード不要。無料のまま練習・暗記カード・模試まで使えます。
