意思決定会員向け10:40

業務的意思決定:関連原価で選択肢を比較する

差額原価収益分析の考え方を基礎に、自製・購入、追加受注、制約資源の各場面で、意思決定に関連する金額だけを抜き出して比較する方法を学びます。埋没原価を除き、事実の整理、判断過程、検算まで一貫して確認します。

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この講で分かるようになること

埋没原価を除き、意思決定に関連する金額だけで判断できる。

  • 差額で比較するための金額の拾い方を身につける。
  • 自製・購入の判断で回避可能原価を見分ける。
  • 追加受注で増分収益と増分原価を対応させる。
  • 制約資源1単位当たりの貢献で優先順位を判断する。

前提知識

  • 日商簿記2級の基本論点。

要点

  1. 判断材料は選択肢によって増減する収益と原価である。
  2. 埋没原価やどちらの案でも同じ金額は比較から除く。
  3. 自製・購入では回避可能原価と購入価額を比べる。
  4. 追加受注では遊休能力の有無と増分原価の範囲を確認する。
  5. 制約資源があるときは1単位当たりの貢献で順位づけする。

判断のルール

  • 定義を確認し、関連する金額と関連しない金額を区別する。
  • 認識では、各選択肢で将来増減する収益・原価だけを拾う。
  • 測定では、差額収益から差額原価を控除して有利不利を判定する。
  • 計算順序は、事実整理、差額抽出、比較、結論の順で進める。
  • 検算では、除外した金額の理由と数量・時間の制約条件を見直す。

例題

例題1自製・購入の比較

部品Xを年2,000個使用する。自製する場合、1個当たり直接材料費180円、直接労務費120円、変動製造間接費40円がかかる。さらに、この部品のための専属監督者給与が年140,000円必要で、自製をやめれば不要になる。一方、工場全体の共通固定費200,000円は自製をやめても減らない。購入する場合、外部購入価額は1個420円である。どちらが有利か求めよ。

答え自製の関連原価=(180円+120円+40円)×2,000個+140,000円=820,000円 購入の関連原価=420円×2,000個=840,000円 差額=840,000円-820,000円=20,000円 結論:自製の方が20,000円有利である。

考え方まず、選択肢で変わる金額だけを拾う。直接材料費、直接労務費、変動製造間接費は自製したときだけ発生するので関連する。専属監督者給与も自製をやめれば不要になるため関連する。一方、共通固定費200,000円は自製をやめても残るので、どちらの案でも同じであり比較から除く。次に、自製案の関連原価と購入案の購入価額を総額で求め、差額を比較する。差額が購入案の方で大きいので、自製が有利と判断する。

確かめ自製の1個当たり関連原価は180円+120円+40円+140,000円÷2,000個=410円。購入価額420円より10円低い。2,000個では10円×2,000個=20,000円となり、総額差額と一致する。

例題2遊休能力がある場合の追加受注

製品Yについて、通常操業の範囲内で追加受注500個の引き合いがある。受注単価は1個1,050円。追加受注に伴い、1個当たり直接材料費300円、直接労務費220円、変動製造間接費130円、変動販売費50円が増加する。さらに、この受注だけの特別包装費が総額60,000円かかる。通常の固定製造間接費と固定販売費は増えない。受注すべきか求めよ。

答え追加受注の増分収益=1,050円×500個=525,000円 追加受注の増分原価=(300円+220円+130円+50円)×500個+60,000円=410,000円 差額利益=525,000円-410,000円=115,000円 結論:追加受注は受ける方が115,000円有利である。

考え方最初に遊休能力があるため、この受注が通常販売を圧迫しないと読む。したがって、判断の中心は追加受注で増える収益と増える原価である。材料費、労務費、変動製造間接費、変動販売費は500個分だけ増えるので関連する。特別包装費もこの受注のためだけに必要なので関連する。一方、通常の固定製造間接費と固定販売費は受注してもしなくても増えないため除く。増分収益が増分原価を上回るため、受注が有利と判断する。

確かめ1個当たりの増分原価は300円+220円+130円+50円=700円。特別包装費を1個当たりに直すと60,000円÷500個=120円で、合計820円。受注単価1,050円との差は230円。500個では230円×500個=115,000円となり、差額利益と一致する。

例題3制約資源がある場合の優先順位

機械時間が月900時間に制約されている。製品Aは1個当たり販売価格2,400円、変動原価1,500円、必要機械時間3時間である。製品Bは1個当たり販売価格1,900円、変動原価1,180円、必要機械時間2時間である。固定費はどちらを選んでも変わらない。制約資源の観点から、どちらを優先すべきか求めよ。

答え製品Aの単位当たり限界利益=2,400円-1,500円=900円 製品Aの機械時間1時間当たり限界利益=900円÷3時間=300円 製品Bの単位当たり限界利益=1,900円-1,180円=720円 製品Bの機械時間1時間当たり限界利益=720円÷2時間=360円 結論:機械時間1時間当たり限界利益が大きい製品Bを優先する。

考え方機械時間が900時間に限られているので、比較基準は製品1個当たりの利益ではなく、制約資源1単位当たりの貢献になる。まず各製品の単位当たり限界利益を求める。次に、それを必要機械時間で割って、1時間当たりの限界利益に直す。Aは300円、Bは360円となるため、同じ1時間を使ったときの貢献はBの方が大きい。固定費はどちらを選んでも変わらないので、この比較には含めない。したがって、制約資源の有効活用という観点ではBを優先する。

確かめ900時間をすべてAに使うと300個生産でき、限界利益は900円×300個=270,000円。900時間をすべてBに使うと450個生産でき、限界利益は720円×450個=324,000円。1時間当たりの比較結果と総額比較の結論が一致する。

よくある間違い

過去に支出した金額を惜しんで判断に入れてしまう。

全部原価の配賦額をそのまま関連原価として使ってしまう。

自製中止後も残る共通固定費まで回避可能原価に含めてしまう。

追加受注で遊休能力の有無を確認せず、通常販売への影響を見落とす。

制約資源があるのに製品1個当たりの利益だけで順位を決めてしまう。

この講の用語

差額原価収益分析さがくげんかしゅうえきぶんせき
複数の選択肢を比べる際に、それぞれの案で増減する収益と原価だけを取り出して有利不利を判断する考え方。
埋没原価まいぼつげんか
すでに発生しており、今後どの案を選んでも回収や回避ができないため、意思決定には関連しない原価。
自製・購入じめいこうにゅう
部品や製品を自社で作るか、外部から買うかを、回避可能原価や購入価額などの差額で判断する論点。
追加受注ついかじゅちゅう
通常とは別に受ける注文について、増分収益と増分原価を比較し、受注の可否を判断すること。
制約資源せいやくしげん
機械時間や作業時間のように供給量に上限があり、生産や販売の意思決定を左右する限られた資源。

章立て

  1. 0:00導入この講の到達目標と、問題文を読む出発点を確認します。
  2. 0:24中心概念差額原価収益分析、自製・購入、追加受注、制約資源
  3. 1:17重要用語差額原価収益分析、埋没原価、自製・購入、追加受注、制約資源
  4. 2:04基本ルール定義を確認し、関連する金額と関連しない金額を区別する。 認識では、各選択肢で将来増減する収益・原価だけを拾う。 測定では、差額収益から差額原価を控除して有利不利を判定する。 計算順序は、事実整理、差額抽出、比較、結論の順で進める。 検算では、除外した金額の理由と数量・時間の制約条件を見直す。
  5. 2:29判断手順取引事実または計算条件を確認し、使う勘定科目・計算順序・検算の順に進みます。
  6. 3:30確認ケース1部品Xを年2,000個使用する。自製する場合、1個当たり直接材料費180円、直接労務費120円、変動製造間接費40円がかかる。さらに、この部品のための専属監督者給与が年140,000円必要で、自製をやめれば不要になる。一方、工場全体の共通固定費200,000円は自製をやめても減らない。購入する場合、外部購入価額は1個420円である。どちらが有利か求めよ。
  7. 4:01確認ケース2製品Yについて、通常操業の範囲内で追加受注500個の引き合いがある。受注単価は1個1,050円。追加受注に伴い、1個当たり直接材料費300円、直接労務費220円、変動製造間接費130円、変動販売費50円が増加する。さらに、この受注だけの特別包装費が総額60,000円かかる。通常の固定製造間接費と固定販売費は増えない。受注すべきか求めよ。
  8. 5:46確認ケース3機械時間が月900時間に制約されている。製品Aは1個当たり販売価格2,400円、変動原価1,500円、必要機械時間3時間である。製品Bは1個当たり販売価格1,900円、変動原価1,180円、必要機械時間2時間である。固定費はどちらを選んでも変わらない。制約資源の観点から、どちらを優先すべきか求めよ。
  9. 7:32よくある誤り過去に支出した金額を惜しんで判断に入れてしまう。 全部原価の配賦額をそのまま関連原価として使ってしまう。 自製中止後も残る共通固定費まで回避可能原価に含めてしまう。 追加受注で遊休能力の有無を確認せず、通常販売への影響を見落とす。 制約資源があるのに製品1個当たりの利益だけで順位を決めてしまう。
  10. 9:42まとめ業務的意思決定では、将来の選択によって変わる金額だけを使って比較します。差額原価収益分析を軸に、自製・購入では回避可能原価と購入価額、追加受注では増分収益と増分原価、制約資源では1単位当たりの貢献を確認します。判断は定義、事実整理、計算、検算の順で進めることが基本です。
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