戦略的原価管理会員向け10:26

戦略的原価管理:原価を競争力へつなげる

ライフサイクル・コスティング、品質原価、ABC、目標原価を通じて、原価計算を記帳だけでなく経営改善の情報として説明できるように整理します。

戦略的原価管理:原価を競争力へつなげるの表紙動画の視聴は会員向けです

この講で分かるようになること

原価計算を記帳だけでなく経営改善の情報として説明できる。

  • ライフサイクル全体で原価を見る視点を身につける。
  • 品質関連費用を性質別に整理して判断できる。
  • ABCの配賦手順を活動量と結び付けて説明できる。
  • 目標原価と見積原価の差額から改善必要額を把握できる。

前提知識

  • 日商簿記2級の基本論点。

要点

  1. ライフサイクル・コスティングは製品の全期間で原価を捉える。
  2. 品質原価は分類の正確さが改善判断の前提になる。
  3. ABCは活動別原価と活動量に基づいて間接費を配賦する。
  4. 目標原価は販売価格と必要利益から逆算する。
  5. 定義、認識・測定、計算順序、検算の順で整理すると混乱しにくい。

判断のルール

  • まず用語の定義を確認し、何を求める論点かを特定する。
  • 対象となる原価や活動量を読み取り、認識・測定の範囲を明確にする。
  • 計算は手順を分けて行い、途中数値の意味を確認する。
  • 最後に合計、差額、配賦額の整合性を検算する。

例題

例題1ライフサイクル・コスティングの確認

ある新製品について、企画・設計段階の原価が120万円、製造段階の原価が480万円、販売後の保守原価が90万円かかる見込みである。販売による収入は800万円と見積もられている。この製品のライフサイクル全体での利益を求めなさい。

答えライフサイクル原価合計=120万円+480万円+90万円=690万円。利益=800万円-690万円=110万円。

考え方この論点では、製造原価だけでなく、企画・設計や販売後保守も含めて製品全体の生涯原価を捉える。与えられた事実は三つの段階別原価と販売収入であるため、まず全段階の原価を合計し、その後に収入と比較して全体利益を求める。製造段階だけを見ると収益性の判断が不十分になるため、全期間で判定するのがポイントである。

確かめ原価の内訳合計は120+480+90=690万円で一致する。収入800万円から原価690万円を差し引くと110万円となり、収入=原価+利益の関係も800=690+110で成り立つ。

例題2品質原価の分類と合計

次の支出を品質原価として分類し、分類別合計と総額を求めなさい。品質教育費18万円、製品検査費22万円、不良品の手直し費15万円、品質改善のための作業標準見直し費10万円、出荷前再検査費5万円。

答え予防に関する原価:品質教育費18万円、作業標準見直し費10万円、合計28万円。検査・測定に関する原価:製品検査費22万円、出荷前再検査費5万円、合計27万円。不良による損失に関する原価:不良品の手直し費15万円、合計15万円。品質原価総額=28万円+27万円+15万円=70万円。

考え方まず各支出の性質を事実から判断する。教育や標準見直しは不良発生を防ぐ目的なので予防に関する原価、検査や再検査は品質を測る活動なので検査・測定に関する原価、手直し費は不良が生じた結果発生するため不良による損失に関する原価と考える。分類後に各区分の合計を出し、最後に総額を求める。

確かめ個別金額の総和は18+22+15+10+5=70万円。分類別合計の総和も28+27+15=70万円で一致するため、分類漏れや重複はない。

例題3ABCと目標原価をつなげて考える

製品Aについて、段取活動原価300万円、総段取回数150回、製品Aの段取回数30回である。また、検査活動原価240万円、総検査回数120回、製品Aの検査回数18回である。製品Aの直接材料費は40万円、直接労務費は24万円とする。さらに、製品Aの目標販売価格は90万円、目標利益は18万円である。ABCによる製品Aの原価を求め、目標原価を達成しているか判定しなさい。

答え段取活動の配賦率=300万円÷150回=2万円/回。製品Aへの段取配賦額=30回×2万円=60万円。検査活動の配賦率=240万円÷120回=2万円/回。製品Aへの検査配賦額=18回×2万円=36万円。製品AのABCによる原価=直接材料費40万円+直接労務費24万円+段取60万円+検査36万円=160万円。目標原価=90万円-18万円=72万円。比較すると、見積原価160万円は目標原価72万円を88万円上回るため、目標原価は未達成であり、88万円の改善が必要である。

考え方まずABCでは活動別原価と総活動量から配賦率を求める。次に製品Aが消費した活動量を掛けて、段取と検査の配賦額を算定する。その後、直接材料費と直接労務費を加えて製品Aの原価を求める。次に目標原価は、販売価格から目標利益を差し引いて逆算する。最後に、ABCで求めた原価を見積原価として目標原価と比較し、超過額を改善必要額として判断する。

確かめ段取活動原価の配賦確認:2万円/回×150回=300万円。検査活動原価の配賦確認:2万円/回×120回=240万円。製品A原価の内訳合計は40+24+60+36=160万円。目標原価72万円との差額は160-72=88万円で整合する。

よくある間違い

結論だけを覚えて、どの前提でその数値になるかを確認しない。

ライフサイクル全体を見るべき場面で、製造段階の原価だけで判断してしまう。

品質関連費用の分類を事実で判断せず、語感だけで決めてしまう。

ABCで活動別原価、総活動量、個別活動量の区別が曖昧になる。

目標原価と見積原価の差額の向きを取り違え、改善必要額を逆に読む。

この講の用語

ライフサイクル・コスティングらいふさいくるこすてぃんぐ
製品の企画から販売後までを含む全期間の原価を把握し、全体の採算性を検討する考え方。
品質原価ひんしつげんか
品質を維持・改善するため、または品質不良によって生じる原価を分類して管理する考え方。
ABCえーびーしー
活動基準原価計算。活動ごとに集計した原価を、活動量に基づいて製品などへ配賦する方法。
目標原価もくひょうげんか
市場で想定される販売価格から必要利益を差し引いて求める、達成すべき原価水準。

章立て

  1. 0:00導入この講の到達目標と、問題文を読む出発点を確認します。
  2. 0:27中心概念ライフサイクル・コスティング、品質原価、ABC、目標原価
  3. 1:15重要用語ライフサイクル・コスティング、品質原価、ABC、目標原価
  4. 2:11基本ルールまず用語の定義を確認し、何を求める論点かを特定する。 対象となる原価や活動量を読み取り、認識・測定の範囲を明確にする。 計算は手順を分けて行い、途中数値の意味を確認する。 最後に合計、差額、配賦額の整合性を検算する。
  5. 2:39判断手順取引事実または計算条件を確認し、使う勘定科目・計算順序・検算の順に進みます。
  6. 3:32確認ケース1ある新製品について、企画・設計段階の原価が120万円、製造段階の原価が480万円、販売後の保守原価が90万円かかる見込みである。販売による収入は800万円と見積もられている。この製品のライフサイクル全体での利益を求めなさい。
  7. 3:57確認ケース2次の支出を品質原価として分類し、分類別合計と総額を求めなさい。品質教育費18万円、製品検査費22万円、不良品の手直し費15万円、品質改善のための作業標準見直し費10万円、出荷前再検査費5万円。
  8. 5:25確認ケース3製品Aについて、段取活動原価300万円、総段取回数150回、製品Aの段取回数30回である。また、検査活動原価240万円、総検査回数120回、製品Aの検査回数18回である。製品Aの直接材料費は40万円、直接労務費は24万円とする。さらに、製品Aの目標販売価格は90万円、目標利益は18万円である。ABCによる製品Aの原価を求め、目標原価を達成しているか判定しなさい。
  9. 6:55よくある誤り結論だけを覚えて、どの前提でその数値になるかを確認しない。 ライフサイクル全体を見るべき場面で、製造段階の原価だけで判断してしまう。 品質関連費用の分類を事実で判断せず、語感だけで決めてしまう。 ABCで活動別原価、総活動量、個別活動量の区別が曖昧になる。 目標原価と見積原価の差額の向きを取り違え、改善必要額を逆に読む。
  10. 9:23まとめ戦略的原価管理では、原価を集計するだけでなく、経営改善や競争力の向上にどう役立てるかを考えます。2027年度の本範囲では、ライフサイクル・コスティング、品質原価、ABC、目標原価を、定義、認識・測定、計算順序、検算の順で整理することが重要です。各論点の目的を区別し、数字の意味と判断の流れを押さえましょう。
日商簿記1級の学習を続ける

講義・過去問・暗記カード・模試まで、同じ論点でつながっています。

登録は1分・クレジットカード不要。無料のまま練習・暗記カード・模試まで使えます。