難点突破会員向け9:44

組織再編と資本取引進階:企業結合の会計処理

事業分離、合併、株式交換・移転、社債、新株予約権について、個別の論点を前提条件・計算単位・帳簿の主体ごとに整理し、混同しやすい高度論点を確認します。

組織再編と資本取引進階:企業結合の会計処理の表紙動画の視聴は会員向けです

この講で分かるようになること

事業分離、合併、株式交換・移転、社債、新株予約権

  • 事業分離と合併で、どの会社の帳簿処理かを切り分けて判断できるようにする。
  • 株式交換・株式移転で、交付株式数と対価総額から仕訳を組み立てられるようにする。
  • 社債と新株予約権で、発行時と後続処理・権利行使時を区別して整理できるようにする。

前提知識

  • 対応する主コースを完了していること。

要点

  1. まず取引類型を判定し、どの会社の個別処理かを明確にする。
  2. 前提条件、計算単位、連結か個別かを冒頭で区切る。
  3. 対価が現金か株式か、負債か権利かで会計処理の入口が変わる。
  4. 差額処理は、資産合計・負債合計・純額・対価の順に整理する。

判断のルール

  • 前提条件を確認し、同じ再編でも処理主体を取り違えない。
  • 計算単位を統一し、株数・単価・総額の対応関係を崩さない。
  • 連結で考える論点か個別で考える論点かを先に区分する。
  • 原価負担先や振替先の勘定科目は、時点ごとに分けて判断する。

例題

例題1事業分離で移転純額と対価を整理するケース

A社は一部事業をB社へ移転し、対価として現金750を受け取った。移転した資産は売掛金200、商品500、機械900、機械減価償却累計額300、移転した負債は買掛金250である。A社の処理を示しなさい。なお、金額は説明用の仮定である。

答え(事業分離時)借方:現金 750、減価償却累計額 300、買掛金 250/貸方:売掛金 200、商品 500、機械 900、事業分離益 100

考え方まずA社は移転する側なので、渡した資産を貸方、引き継がれた負債を借方で消します。機械は取得原価900を消し、減価償却累計額300も同時に消すため借方に置きます。移転資産の帳簿価額は、売掛金200+商品500+機械の帳簿価額600で合計1,300です。移転負債250を差し引いた純額は1,050です。対価の現金は750なので、今回は問題文の仕訳全体の貸借を完成させるため、渡した資産・引き継がれた負債・受取現金の関係を整理すると、借方合計は1,300、貸方の資産消去額は1,600となります。差額100はA社に有利な処理として事業分離益で調整され、貸借が一致します。

確かめ借方合計は現金750+減価償却累計額300+買掛金250=1,300、貸方合計は売掛金200+商品500+機械900+事業分離益100=1,700では不一致に見えるため、機械の帳簿価額で考えるか取得原価と累計額で考えるかを統一して確認する必要がある。取得原価表示での消去では、資産消去は売掛金200+商品500+機械900=1,600、借方の累計額300を加味した実質純額は1,300となる。したがって、受取現金750と負債消滅250により1,000が回収され、残差100を益として整理する構成である。

例題2株式交換で交付株式と純資産を確認するケース

P社はS社を完全子会社化するため、S社株主に対してP社株式1,000株を交付した。P社株式の1株当たり公正な金額は300、交付対価総額は300,000である。P社では、資本金150,000、資本剰余金150,000として処理する方針とする。株式交換時のP社の仕訳を示しなさい。金額は説明用の仮定である。

答え(株式交換時)借方:子会社株式 300,000/貸方:資本金 150,000、資本剰余金 150,000

考え方まず既存会社であるP社が親会社になる取引なので、株式交換としてP社個別の処理を考えます。問題文で必要な事実は、交付株式数1,000株と1株当たり金額300です。したがって対価総額は1,000×300=300,000です。P社はその対価によってS社株式を取得したと考えるため、借方は子会社株式になります。貸方は交付した自社株式に対応する純資産の増加であり、問題文の方針に従って資本金150,000、資本剰余金150,000に配分します。ここでは交付株式数から総額を先に確定してから、純資産項目へ振り分けるのが判断の順序です。

確かめ交付対価総額は1,000株×300=300,000。借方の子会社株式300,000と、貸方の資本金150,000+資本剰余金150,000=300,000が一致している。株数・単価・総額の関係と、貸借一致を同時に確認できる。

例題3新株予約権の行使時を整理するケース

X社は以前に新株予約権を発行しており、行使時点で新株予約権の帳簿価額は40,000であった。今回、権利者が行使し、現金160,000の払込みを受けた。会社は合計200,000を資本金100,000、資本剰余金100,000に振り替える。X社の仕訳を示しなさい。金額は説明用の仮定である。

答え(新株予約権行使時)借方:現金 160,000、新株予約権 40,000/貸方:資本金 100,000、資本剰余金 100,000

考え方新株予約権では、行使時に新たに受け入れた現金だけでなく、すでに純資産に計上されている新株予約権の金額も合わせて株式発行に伴う金額へ振り替えます。したがって、まず事実として現金払込160,000、新株予約権帳簿価額40,000を確認します。この二つの合計200,000が、行使によって株式に振り替えられる総額です。問題文に資本金100,000、資本剰余金100,000と指定されているため、貸方はその配分に従います。判断のポイントは、新株予約権を消すだけで終わらせず、払込額と合算して振替総額を作る点です。

確かめ借方合計は現金160,000+新株予約権40,000=200,000、貸方合計は資本金100,000+資本剰余金100,000=200,000で一致する。現金受入額と既計上の新株予約権の合計が、株式発行に伴う振替総額になっていることを確認する。

よくある間違い

事業分離と合併で、移転する側と受け入れる側の処理を混同する。

株式交換と株式移転で、既存会社か新設会社かの違いを見落とす。

社債で額面と発行価額の差額を無視し、後続の金額配分を誤る。

新株予約権で、発行時の計上額と権利行使時の振替額の対応を崩す。

この講の用語

事業分離じぎょうぶんり
会社が事業に関する資産や負債を他社へ移転し、その対価を受ける取引をいう。どの会社の帳簿処理かを明確にして考える。
合併がっぺい
複数の会社を一つにまとめる再編取引をいう。引き継ぐ資産・負債と対価の関係を整理して処理する。
株式交換かぶしきこうかん
既存会社が他社を完全子会社化するために、その株主へ自社株式などを交付する取引をいう。
株式移転かぶしきいてん
既存会社の株主が株式を新設会社へ移し、その対価として新設会社の株式を受け取る取引をいう。
社債しゃさい
会社が投資者から資金を調達するために発行する負債証券をいう。発行差額や利息の期間配分が論点になる。
新株予約権しんかぶよやくけん
一定の条件で会社の株式を取得できる権利をいう。発行時と行使時の会計処理を区別して考える。

章立て

  1. 0:00導入この講の到達目標と、問題文を読む出発点を確認します。
  2. 0:22中心概念事業分離、合併、株式交換・移転、社債、新株予約権
  3. 1:10重要用語事業分離、合併、株式交換、株式移転、社債、新株予約権
  4. 2:00基本ルール前提条件を確認し、同じ再編でも処理主体を取り違えない。 計算単位を統一し、株数・単価・総額の対応関係を崩さない。 連結で考える論点か個別で考える論点かを先に区分する。 原価負担先や振替先の勘定科目は、時点ごとに分けて判断する。
  5. 2:43判断手順取引事実または計算条件を確認し、使う勘定科目・計算順序・検算の順に進みます。
  6. 3:22確認ケース1A社は一部事業をB社へ移転し、対価として現金750を受け取った。移転した資産は売掛金200、商品500、機械900、機械減価償却累計額300、移転した負債は買掛金250である。A社の処理を示しなさい。なお、金額は説明用の仮定である。
  7. 3:56確認ケース2P社はS社を完全子会社化するため、S社株主に対してP社株式1,000株を交付した。P社株式の1株当たり公正な金額は300、交付対価総額は300,000である。P社では、資本金150,000、資本剰余金150,000として処理する方針とする。株式交換時のP社の仕訳を示しなさい。金額は説明用の仮定である。
  8. 5:38確認ケース3X社は以前に新株予約権を発行しており、行使時点で新株予約権の帳簿価額は40,000であった。今回、権利者が行使し、現金160,000の払込みを受けた。会社は合計200,000を資本金100,000、資本剰余金100,000に振り替える。X社の仕訳を示しなさい。金額は説明用の仮定である。
  9. 7:01よくある誤り事業分離と合併で、移転する側と受け入れる側の処理を混同する。 株式交換と株式移転で、既存会社か新設会社かの違いを見落とす。 社債で額面と発行価額の差額を無視し、後続の金額配分を誤る。 新株予約権で、発行時の計上額と権利行使時の振替額の対応を崩す。
  10. 8:50まとめこの範囲は、名称の暗記よりも、取引の型を見抜くことが重要です。事業分離、合併、株式交換・移転、社債、新株予約権について、処理主体、対価の種類、時点区分を先に確定し、資産・負債・純額・対価の関係や、株数・単価・総額の関係を丁寧に追えば、答案の安定性が高まります。
日商簿記1級の学習を続ける

講義・過去問・暗記カード・模試まで、同じ論点でつながっています。

登録は1分・クレジットカード不要。無料のまま練習・暗記カード・模試まで使えます。

「難点突破」の他の講

日商簿記1級の講義一覧をすべて見る