総合原価計算進階:仕損・減損・連産品を負担先で解く
正常損失・異常損失、副産物、連産品、先入先出法、工程別総合原価計算について、原価の負担先を軸に整理する講義です。数量の流れを見ながら、どこへ原価を配分し、どこを切り離すかを判断できるようにします。
動画の視聴は会員向けですこの講で分かるようになること
正常・異常損失、副産物、連産品、先入先出、工程別
- 正常損失と異常損失を負担先の違いで説明できるようにする。
- 副産物と連産品の原価配分の考え方を区別できるようにする。
- 先入先出法で月初仕掛品と当月投入分を分けて数量整理できるようにする。
前提知識
- 対応する主コースを完了していること。
ひとつ前の講:組織再編と資本取引進階:企業結合の会計処理
要点
- 数量計算の前に、完成品・月末仕掛品・異常損失・副産物・連産品のどこが負担先かを定める。
- 正常損失は通常の操業の範囲内として良品側へ吸収し、異常損失は通常原価から切り離して把握する。
- 先入先出法では月初仕掛品の追加加工分と当月投入分を区別して完成品換算量を求める。
- 副産物は主産物原価の控除項目として扱う場合があり、連産品は結合原価を合理的基準で配分する。
- 工程別では、どの工程で損失や分離が生じたかを明確にして原価を追跡する。
判断のルール
- 前提条件を確認し、正常か異常か、副産物か連産品かを最初に判定する。
- 計算単位を統一し、数量・完成度・工程を混在させない。
- 結合原価と分離点後原価、前工程費と当工程加工費を分けて考える。
- 先入先出法では月初仕掛品を当月投入分と平均化しない。
例題
例題1正常損失と異常損失の判定ケース
ある工程で当月投入1,000kg、完成品900kg、月末仕掛品20kg、実際損失80kgであった。正常損失は投入量の5%と見積もられている。損失のうち正常損失と異常損失をそれぞれ何kgと判断するか。
答え正常損失50kg、異常損失30kg。
考え方まず、予定された操業条件の範囲内かどうかで分ける。正常損失は投入1,000kg×5%=50kgである。実際損失は80kgなので、予定内の50kgまでは正常損失、これを超える30kgは異常損失となる。ここで完成品900kgと月末仕掛品20kgが与えられているのは、全体の数量関係を確認するためであり、損失区分の基準自体は正常率にあると判断する。
確かめ数量検算:投入1,000kg=完成品900kg+月末仕掛品20kg+実際損失80kg。内訳検算:実際損失80kg=正常損失50kg+異常損失30kg。
例題2副産物の手取額控除ケース
主産物Aと副産物Bが同じ工程から生じた。当月の結合製造原価は240,000円である。副産物Bは販売価額18,000円、販売に要する費用3,000円、分離後の追加加工費5,000円であった。副産物の手取額を主産物原価から控除する方法によると、主産物Aに負担させる原価はいくらか。
答え副産物Bの手取額=18,000円-3,000円-5,000円=10,000円。主産物Aに負担させる原価=240,000円-10,000円=230,000円。
考え方副産物は付随的な産出物なので、結合原価を本格的に配分するのではなく、まず販売価額から分離後に必要な費用を差し引いて手取額を求める。販売に要する費用3,000円と追加加工費5,000円は、副産物から回収できる純額を減らす要素であるため控除する。したがって手取額は10,000円となり、この金額だけ主産物原価を減額する。
確かめ手取額検算:18,000円-3,000円-5,000円=10,000円。原価検算:主産物原価230,000円+副産物手取額10,000円=結合製造原価240,000円。
例題3連産品への結合原価配分ケース
分離点までの結合原価300,000円を、連産品XとYに販売価額比で配分する。分離点での販売価額はXが180,000円、Yが120,000円である。XとYへの配分額を求めなさい。
答え販売価額合計は300,000円。したがって配分比率はXが180,000/300,000=60%、Yが120,000/300,000=40%。配分額はXが300,000円×60%=180,000円、Yが300,000円×40%=120,000円。
考え方連産品はどちらも主要な産出物なので、分離点までの結合原価を合理的基準で配分する。ここでは販売価額比が指定されているため、まず各連産品の分離点販売価額の合計を求める。次に各製品の販売価額が全体に占める割合を出し、その比率を結合原価300,000円へ乗じる。副産物のような手取額控除ではなく、両者へ配分する処理である点が判断の中心になる。
確かめ比率検算:60%+40%=100%。配分額検算:180,000円+120,000円=300,000円で結合原価と一致する。
よくある間違い
正常損失と異常損失を、予定率ではなく単なる数量差だけで判定してしまう。
先入先出法なのに月初仕掛品と当月投入分を混ぜて平均的に処理してしまう。
副産物と連産品を同じ考え方で処理し、手取額控除と結合原価配分を混同してしまう。
工程別計算で、どの工程で発生した損失かを確認せずに全工程へ一括で影響させてしまう。
この講の用語
- 正常損失せいじょうそんしつ
- 予定された操業条件の範囲内で避けがたく生じる減少で、通常は良品や仕掛品などに原価を負担させる対象。
- 異常損失いじょうそんしつ
- 予定された範囲を超えて生じた減少で、通常の製造原価から切り離して把握する対象。
- 副産物ふくさんぶつ
- 主産物の製造過程で付随的に生じる産出物で、手取額を主産物原価から控除して扱うことがある。
- 連産品れんさんぴん
- 同一工程から生じる複数の主要産出物で、分離点までの結合原価を合理的基準で配分する対象。
- 先入先出法さきいれさきだしほう
- 月初仕掛品と当月投入分を区別し、当月に行った加工だけを当月の完成品換算量に反映させる方法。
章立て
- 0:00導入この講の到達目標と、問題文を読む出発点を確認します。
- 0:22中心概念正常・異常損失、副産物、連産品、先入先出、工程別
- 1:10重要用語正常損失、異常損失、副産物、連産品、先入先出法
- 1:59基本ルール前提条件を確認し、正常か異常か、副産物か連産品かを最初に判定する。 計算単位を統一し、数量・完成度・工程を混在させない。 結合原価と分離点後原価、前工程費と当工程加工費を分けて考える。 先入先出法では月初仕掛品を当月投入分と平均化しない。
- 2:27判断手順取引事実または計算条件を確認し、使う勘定科目・計算順序・検算の順に進みます。
- 3:07確認ケース1ある工程で当月投入1,000kg、完成品900kg、月末仕掛品20kg、実際損失80kgであった。正常損失は投入量の5%と見積もられている。損失のうち正常損失と異常損失をそれぞれ何kgと判断するか。
- 3:37確認ケース2主産物Aと副産物Bが同じ工程から生じた。当月の結合製造原価は240,000円である。副産物Bは販売価額18,000円、販売に要する費用3,000円、分離後の追加加工費5,000円であった。副産物の手取額を主産物原価から控除する方法によると、主産物Aに負担させる原価はいくらか。
- 5:10確認ケース3分離点までの結合原価300,000円を、連産品XとYに販売価額比で配分する。分離点での販売価額はXが180,000円、Yが120,000円である。XとYへの配分額を求めなさい。
- 6:32よくある誤り正常損失と異常損失を、予定率ではなく単なる数量差だけで判定してしまう。 先入先出法なのに月初仕掛品と当月投入分を混ぜて平均的に処理してしまう。 副産物と連産品を同じ考え方で処理し、手取額控除と結合原価配分を混同してしまう。 工程別計算で、どの工程で発生した損失かを確認せずに全工程へ一括で影響させてしまう。
- 8:04まとめ総合原価計算の難点は、数量を計算すること以上に、原価の負担先を正しく見極めることにあります。正常損失と異常損失、副産物と連産品、先入先出法と工程別という各論点を、どこへ原価を残し、どこを切り離すかという視点で整理すると、処理の一貫性が保ちやすくなります。
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