標準原価差異進階:物量・価格・操業度を分解する
工業簿記の難点である標準原価差異について、材料・労務・間接費差異、配合差異・歩留差異、さらに差異処理までを整理して学ぶ内容です。前提条件と計算単位を確認しながら、どの差異をどの基準で測るかを丁寧に分解して理解します。
動画の視聴は会員向けですこの講で分かるようになること
材料・労務・間接費差異、配合・歩留、差異処理
- 材料差異と労務差異を価格面と数量・時間面に分けて判断できるようにする
- 配合差異と歩留差異の順序立てた計算を身につける
- 間接費差異の予算差異・能率差異・操業度差異を意味まで含めて説明できるようにする
前提知識
- 対応する主コースを完了していること。
ひとつ前の講:総合原価計算進階:仕損・減損・連産品を負担先で解く
要点
- 差異は総額で見る前に、原因別に分解して捉える
- 標準数量や標準時間は実際生産量に許される量として求める
- 配合差異は比率のずれ、歩留差異は総量と産出の関係のずれを示す
- 製造間接費差異は変動費部分と固定費部分を分けて整理する
- 差異処理では負担先と総差異との一致を必ず確認する
判断のルール
- 前提条件を先に確認し、標準と実際の比較対象を混同しない
- 計算単位を統一し、数量・時間・金額を途中で混ぜない
- 原価要素ごとに差異の式を使い分ける
- 差異の内訳合計が総差異に一致するか検算する
例題
例題1材料差異の価格差異と数量差異
ある製品を400個生産した。製品1個当たりの標準材料消費量は2kg、標準単価は1kg当たり300円である。実際には820kgを1kg当たり290円で購入・消費した。材料価格差異、材料数量差異、材料総差異を求めなさい。
答え標準数量=400個×2kg=800kg 材料価格差異=実際消費量820kg×(実際単価290円-標準単価300円)=△8,200円(有利) 材料数量差異=標準単価300円×(実際数量820kg-標準数量800kg)=6,000円(不利) 材料総差異=実際原価237,800円-標準原価240,000円=△2,200円(有利) または、△8,200円+6,000円=△2,200円(有利)
考え方まず、数量差異の基準となる標準数量は、予定生産量ではなく実際生産量400個に許される数量として800kgと判断する。次に、価格差異は単価のずれを測るため実際消費量820kgを掛け、数量差異は消費量のずれを測るため標準単価300円を掛ける。実際単価が標準単価より低いので価格差異は有利、実際数量が標準数量より多いので数量差異は不利となる。最後に両差異の合計で総差異と一致するか確認する。
確かめ実際原価=820kg×290円=237,800円、標準原価=800kg×300円=240,000円なので総差異は△2,200円。有利差異△8,200円と不利差異6,000円の合計も△2,200円となり一致する。
例題2労務差異の賃率差異と能率差異
製品300個を完成した。製品1個当たりの標準直接作業時間は1.5時間、標準賃率は1時間当たり1,600円である。実際には470時間を使い、実際賃率は1時間当たり1,550円であった。労務賃率差異、労務能率差異、労務総差異を求めなさい。
答え標準時間=300個×1.5時間=450時間 労務賃率差異=実際時間470時間×(実際賃率1,550円-標準賃率1,600円)=△23,500円(有利) 労務能率差異=標準賃率1,600円×(実際時間470時間-標準時間450時間)=32,000円(不利) 労務総差異=実際賃金728,500円-標準賃金720,000円=8,500円(不利) または、△23,500円+32,000円=8,500円(不利)
考え方最初に、標準時間は実際生産量300個に許される時間として450時間と判断する。賃率差異は賃率の違いによる影響を見るので実際時間470時間を基準にする。能率差異は作業時間の良し悪しを見るため、標準賃率1,600円で実際時間と標準時間の差20時間を評価する。実際賃率は標準より低いので賃率差異は有利、実際時間は標準より多いので能率差異は不利となる。両者の合計が総差異に一致するかで判断の正しさを確かめる。
確かめ実際賃金=470時間×1,550円=728,500円、標準賃金=450時間×1,600円=720,000円で、総差異は8,500円不利。内訳の合計も△23,500円+32,000円=8,500円で一致する。
例題3配合差異と歩留差異の確認
混合製品1,000kgの標準投入は、材料Aを600kg、材料Bを400kg、合計1,000kgで、標準単価はAが1kg当たり200円、Bが1kg当たり300円である。実際には製品980kgを得るために、材料Aを650kg、材料Bを370kg、合計1,020kg投入した。配合差異と歩留差異を求めなさい。なお、標準歩留は投入1,000kgから産出1,000kgとする。
答え実際総投入量=1,020kg 標準配合比による再配合数量:A=1,020kg×60%=612kg、B=1,020kg×40%=408kg 配合差異=A:200円×(650kg-612kg)+B:300円×(370kg-408kg)=7,600円不利+△11,400円有利=△3,800円(有利) 実際産出980kgに対する標準総投入量=980kg 歩留差異=標準平均単価240円×(実際総投入量1,020kg-標準総投入量980kg)=9,600円(不利) ただし標準平均単価240円=(600kg×200円+400kg×300円)÷1,000kg 材料数量差異合計=△3,800円+9,600円=5,800円(不利)
考え方まず、複数材料の数量差異は、いきなり全体差異を求めるのではなく、配合と歩留に分ける。配合差異では実際総投入量1,020kgを固定し、その中で標準配合比60対40ならA612kg、B408kgになると判断する。実際配合との差を各標準単価で評価すると、Aの使い過ぎは不利、Bの使い減りは有利となる。次に歩留差異では、実際産出980kgを得るのに標準なら総投入980kgで足りると考え、実際総投入1,020kgとの差40kgを標準平均単価で評価する。こうして、比率の問題と総量の問題を切り分けている。
確かめ標準平均単価=240,000円÷1,000kg=240円。総数量差異は、実際投入原価241,000円〔650kg×200円+370kg×300円〕と、実際産出980kgに対する標準原価235,200円〔980kg×240円〕との差5,800円不利。配合差異△3,800円と歩留差異9,600円の合計も5,800円不利で一致する。
よくある間違い
実際生産量に対する標準数量ではなく、予定数量を使ってしまう
価格差異と数量差異、賃率差異と能率差異の基準数量を逆にする
配合差異と歩留差異の順番が曖昧で、途中数量の意味が崩れる
固定費の操業度差異を変動費の能率差異と同じ感覚で扱ってしまう
差異の内訳合計と総差異の一致確認をしない
この講の用語
- 価格差異かかくさい
- 実際単価と標準単価の差によって生じる差異で、通常は実際消費量または実際作業時間を基準に測定する。
- 能率差異のうりつさい
- 実際作業時間と標準作業時間の差によって生じる差異で、標準賃率や標準配賦率を基準に評価する。
- 操業度差異そうぎょうどさい
- 固定製造間接費において、実際操業度と基準操業度の差により固定費の回収額がずれることで生じる差異。
- 配合差異はいごうさい
- 複数材料の総投入量を前提として、実際配合比率が標準配合比率からずれたことによる差異。
- 歩留差異ぶどまりさい
- 標準歩留と実際歩留の差によって生じる差異で、投入総量と産出量の関係のずれを表す。
章立て
- 0:00導入この講の到達目標と、問題文を読む出発点を確認します。
- 0:21中心概念材料・労務・間接費差異、配合・歩留、差異処理
- 1:08重要用語価格差異、能率差異、操業度差異、配合差異、歩留差異
- 1:56基本ルール前提条件を先に確認し、標準と実際の比較対象を混同しない 計算単位を統一し、数量・時間・金額を途中で混ぜない 原価要素ごとに差異の式を使い分ける 差異の内訳合計が総差異に一致するか検算する
- 2:38判断手順取引事実または計算条件を確認し、使う勘定科目・計算順序・検算の順に進みます。
- 3:17確認ケース1ある製品を400個生産した。製品1個当たりの標準材料消費量は2kg、標準単価は1kg当たり300円である。実際には820kgを1kg当たり290円で購入・消費した。材料価格差異、材料数量差異、材料総差異を求めなさい。
- 3:51確認ケース2製品300個を完成した。製品1個当たりの標準直接作業時間は1.5時間、標準賃率は1時間当たり1,600円である。実際には470時間を使い、実際賃率は1時間当たり1,550円であった。労務賃率差異、労務能率差異、労務総差異を求めなさい。
- 5:29確認ケース3混合製品1,000kgの標準投入は、材料Aを600kg、材料Bを400kg、合計1,000kgで、標準単価はAが1kg当たり200円、Bが1kg当たり300円である。実際には製品980kgを得るために、材料Aを650kg、材料Bを370kg、合計1,020kg投入した。配合差異と歩留差異を求めなさい。なお、標準歩留は投入1,000kgから産出1,000kgとする。
- 7:02よくある誤り実際生産量に対する標準数量ではなく、予定数量を使ってしまう 価格差異と数量差異、賃率差異と能率差異の基準数量を逆にする 配合差異と歩留差異の順番が曖昧で、途中数量の意味が崩れる 固定費の操業度差異を変動費の能率差異と同じ感覚で扱ってしまう 差異の内訳合計と総差異の一致確認をしない
- 9:51まとめ標準原価差異の高度論点では、材料・労務・間接費をそれぞれ原因別に分け、さらに複数材料では配合差異と歩留差異まで掘り下げて考えます。式だけで処理するのではなく、何を基準に比較しているかを明確にし、最後は差異処理と総差異の整合まで確認することが重要です。
登録は1分・クレジットカード不要。無料のまま練習・暗記カード・模試まで使えます。
