意思決定進階:制約資源・不確実性・戦略原価
制約資源、複数製品CVP、感度分析、戦略的原価管理を、前提条件と計算単位の整理から学ぶ講義です。高度論点どうしを混同せず、どの事実を見てどう判断するかを確認します。
動画の視聴は会員向けですこの講で分かるようになること
制約資源、複数製品CVP、感度分析、戦略的原価管理
- 制約資源当たり限界利益で優先順位を判定できるようにする
- 複数製品CVPを販売構成比と加重平均で処理できるようにする
- 感度分析で利益変動の大きい要因を比較できるようにする
- 戦略的原価管理を短期採算と区別して説明できるようにする
前提知識
- 対応する主コースを完了していること。
ひとつ前の講:標準原価差異進階:物量・価格・操業度を分解する
要点
- 制約資源問題では制約1単位当たり限界利益で比較する
- 複数製品CVPでは販売構成比を前提に加重平均限界利益を使う
- 感度分析では前提を一つずつ変えて利益への影響を測る
- 戦略的原価管理では原価削減だけでなく競争力への影響も考える
- 計算前に前提条件と計算単位を明確にする
判断のルール
- 前提条件を確認し、短期判断か中長期判断かを分ける
- 計算単位を製品1個、制約資源1単位、販売ミックス1組などに固定する
- 需要上限や販売構成比がある場合は、その制約を反映して計算する
- 固定費が不変か回避可能かを問題文に従って区別する
例題
例題1制約資源の配分判断
製品Aの販売単価は500円、単位変動費は300円、1個当たり機械時間は4時間、最大需要は30個である。製品Bの販売単価は420円、単位変動費は260円、1個当たり機械時間は2時間、最大需要は50個である。今月の機械時間は100時間しか使えない。固定費は今月は変わらないものとする。どちらを優先して生産し、各製品を何個生産すると総限界利益はいくらになるか。
答えAの単位限界利益は500円−300円=200円、機械1時間当たり限界利益は200円÷4時間=50円。Bの単位限界利益は420円−260円=160円、機械1時間当たり限界利益は160円÷2時間=80円。したがってBを優先する。まずBを最大需要50個まで生産すると機械時間は50個×2時間=100時間となる。残り時間は0時間なのでAは0個。総限界利益はBの50個×160円=8,000円。
考え方不足しているのは機械時間なので、比較すべき指標は製品1個当たり限界利益ではなく、機械1時間当たり限界利益である。Aは1個当たりの限界利益が200円でBの160円より大きいが、機械時間を多く使うため効率はAが50円、Bが80円となる。したがって限られた100時間を先にBへ配分する。需要上限も確認すると、Bは50個まで売れるので100時間をちょうど使い切ることができる。その結果、Aへ配分する時間は残らない。
確かめBの生産時間は50個×2時間=100時間で制約時間と一致する。総限界利益8,000円の内訳は50個×160円で整合する。仮にAだけを作ると100時間÷4時間=25個、限界利益は25個×200円=5,000円であり、B優先の8,000円の方が有利である。
例題2複数製品CVPの損益分岐点
製品Xは販売単価1,000円、単位変動費600円、製品Yは販売単価800円、単位変動費500円である。販売構成比はX:2個、Y:3個で一定とする。月間固定費は17,500円である。損益分岐点の販売ミックスは何組か。また、そのときのXとYの販売個数はいくつか。
答え1組当たりの売上高はXが2個×1,000円=2,000円、Yが3個×800円=2,400円、合計4,400円。1組当たりの変動費はXが2個×600円=1,200円、Yが3個×500円=1,500円、合計2,700円。したがって1組当たり限界利益は4,400円−2,700円=1,700円。損益分岐点販売ミックスは17,500円÷1,700円=10.2941…組なので、営業利益が0以上となる最小の整数組数は11組。よって販売個数はXが2個×11組=22個、Yが3個×11組=33個である。
考え方複数製品CVPでは、各製品ごとに別々の損益分岐点を求めるのではなく、問題文の販売構成比2:3を固定して1組として扱う。まず1組の売上高、変動費、限界利益をまとめ、その1組で固定費を何組回収できるかを考える。固定費17,500円に対して1組当たり限界利益は1,700円なので、ちょうど0にするには10.2941…組必要となる。しかし実際の販売は組単位で考えるため、利益が0以上となる最小単位は11組である。
確かめ11組の売上高は4,400円×11=48,400円、変動費は2,700円×11=29,700円、限界利益は18,700円。ここから固定費17,500円を引くと営業利益は1,200円で0以上になる。10組なら限界利益17,000円で固定費を500円回収しきれず、損益分岐点到達前であることも確認できる。
例題3感度分析で利益に強く効く要因を比べる
ある製品の現在の条件は、販売単価2,000円、単位変動費1,200円、販売数量300個、固定費180,000円である。次の三つの変化をそれぞれ単独で考える。①販売数量が10%減少する。②販売単価が100円下がる。③単位変動費が80円上がる。各場合の営業利益を求め、どの要因が最も利益を悪化させるか判定しなさい。
答え現在の単位限界利益は2,000円−1,200円=800円、現在の営業利益は800円×300個−180,000円=60,000円。①数量10%減少では販売数量300個×90%=270個、営業利益は800円×270個−180,000円=36,000円。②売価100円下落では単位限界利益は1,900円−1,200円=700円、営業利益は700円×300個−180,000円=30,000円。③変動費80円上昇では単位限界利益は2,000円−1,280円=720円、営業利益は720円×300個−180,000円=36,000円。最も利益を悪化させるのは②売価100円下落である。
考え方感度分析では、三つの条件を同時に変えるのではなく、それぞれを単独で現在値と比較する。現在利益を基準にし、各変化後の単位限界利益または販売数量を修正して営業利益を再計算する。①は販売数量だけが変化し、単位限界利益800円はそのままである。②は売価だけが下がるため、単位限界利益が800円から700円へ低下する。③は単位変動費だけが上がるため、単位限界利益は720円となる。算出後は現在利益60,000円からの減少額を比べれば、どの要因の感度が高いか判断できる。
確かめ現在利益60,000円に対し、①は36,000円で24,000円減、②は30,000円で30,000円減、③は36,000円で24,000円減である。減少額の最大は②である。なお②の利益減少30,000円は、単位限界利益が100円下がり、それが300個に掛かるため100円×300個=30,000円と差額計算でも一致する。
よくある間違い
限界利益額だけで製品の優先順位を決め、制約資源当たりの比較をしない
複数製品CVPで販売構成比を無視して単一製品の式をそのまま使う
感度分析で複数条件を同時に変え、どの要因の影響か分からなくする
短期の意思決定と中長期の戦略判断を同じ基準で処理する
固定費が不変か回避可能かの確認をせずに判断する
この講の用語
- 制約資源せいやくしげん
- 生産や販売の拡大を妨げる不足資源で、材料、機械時間、熟練作業時間などが典型例である。意思決定では制約1単位当たりの限界利益で評価する。
- 複数製品CVPふくすうせいひんしーぶいぴー
- 複数の製品を同時に扱う損益分岐分析で、販売構成比が一定という前提の下、加重平均限界利益を用いて全体の損益関係を求める考え方である。
- 感度分析かんどぶんせき
- 売価、数量、変動費、固定費などの前提条件を変化させたとき、利益や損益分岐点がどれだけ変わるかを調べる分析である。
- 戦略的原価管理せんりゃくてきげんかかんり
- 短期的な原価削減だけでなく、市場競争力や製品戦略との関係も踏まえて原価を管理する考え方である。
章立て
- 0:00導入この講の到達目標と、問題文を読む出発点を確認します。
- 0:22中心概念制約資源、複数製品CVP、感度分析、戦略的原価管理
- 1:06重要用語制約資源、複数製品CVP、感度分析、戦略的原価管理
- 1:51基本ルール前提条件を確認し、短期判断か中長期判断かを分ける 計算単位を製品1個、制約資源1単位、販売ミックス1組などに固定する 需要上限や販売構成比がある場合は、その制約を反映して計算する 固定費が不変か回避可能かを問題文に従って区別する
- 2:30判断手順取引事実または計算条件を確認し、使う勘定科目・計算順序・検算の順に進みます。
- 3:06確認ケース1製品Aの販売単価は500円、単位変動費は300円、1個当たり機械時間は4時間、最大需要は30個である。製品Bの販売単価は420円、単位変動費は260円、1個当たり機械時間は2時間、最大需要は50個である。今月の機械時間は100時間しか使えない。固定費は今月は変わらないものとする。どちらを優先して生産し、各製品を何個生産すると総限界利益はいくらになるか。
- 3:27確認ケース2製品Xは販売単価1,000円、単位変動費600円、製品Yは販売単価800円、単位変動費500円である。販売構成比はX:2個、Y:3個で一定とする。月間固定費は17,500円である。損益分岐点の販売ミックスは何組か。また、そのときのXとYの販売個数はいくつか。
- 5:15確認ケース3ある製品の現在の条件は、販売単価2,000円、単位変動費1,200円、販売数量300個、固定費180,000円である。次の三つの変化をそれぞれ単独で考える。①販売数量が10%減少する。②販売単価が100円下がる。③単位変動費が80円上がる。各場合の営業利益を求め、どの要因が最も利益を悪化させるか判定しなさい。
- 6:45よくある誤り限界利益額だけで製品の優先順位を決め、制約資源当たりの比較をしない 複数製品CVPで販売構成比を無視して単一製品の式をそのまま使う 感度分析で複数条件を同時に変え、どの要因の影響か分からなくする 短期の意思決定と中長期の戦略判断を同じ基準で処理する 固定費が不変か回避可能かの確認をせずに判断する
- 8:54まとめ意思決定の高度論点では、何を比較単位にするか、どの前提が固定されているかを先に固めることが重要です。制約資源は制約1単位当たり限界利益、複数製品CVPは販売構成比と加重平均、感度分析は前提を一つずつ動かす方法、戦略的原価管理は短期採算と全体最適の区別が中心です。
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